ド素人が手組みホイールに挑戦 その4
今回は振れ取りとテンション調整です。前回の組立作業まではそこそこ順調でした。腕の差が出るのはこの辺からです。
振れ取り台のセンター出し
今回使う振れ取り台PWTのWTS12はコピー元であるParktoolのTS2.2と同じく、振れ取りをしながら自動でセンターを出してくれる機能があります。そのためまず振れ取り作業前に振れ取り台のセンター調整をする必要があります。
そこでセンター調整に振れ取り台用の校正ゲージを使います。それが道具紹介の時に少し触れたものです。
しかしこのセンタリング機能 、いくら調節しても左右入れ替えるとずれたりいまいち安定しません。調整方法はParktoolのものを参考にしました。
https://www.hozan.co.jp/parktool/support/pdf/TS-2.pdf
Parktoolの解説動画を見るとアームで挟み込む構造上ある程度は仕方なく、 正確にセンターを出すにはセンターゲージ使いましょうとのこと。
How To Use & Center the TS-4 Professional Wheel Truing Stand
そんなわけで校正ゲージは無駄な買い物になってしまいました。正直鉄板を打ち抜いただけのもので、品質もいまいちだったのでこれは失敗だったかなと思っています。Parktoolのは振れ取り台に固定する部分もハブのシャフトに似せた作りになっていて良さそうです。値段も上がりますが。
センターが出ているホイールを持っているならそれで事足ります。
ただしその後ほぼ初期状態のまま使用していますが、特に問題なく振れ取りは出来ました。センターゲージがあればセンター出しも問題ありません。
土台は鉄板なので、床などの傷防止にノートを敷いています。
ただこの振れ取り台、部屋に置くと意外と邪魔です。重い上に形状的に収納も難しく、高さもあるので結構場所を必要とします。作業中は机の上に移動させますが、普段はとりあえずPCの上に置いてあります。専用の作業スペースが欲しいところです。
振れ取り作業
振れの取り方や仕組みに付いては様々なサイトで細かく説明されているので、割愛させていただきます。
こちらのCBNフォーラムのトピックや、(追記:残念ながら記事作成後の10/3でフォーラムはサービス終了したようです)ミノウラの振れ取り台説明書を参考にされるといいと思います。基本的に締めた方にリムが寄っていくのですが、全体を見て整えていくのがコツでしょうか。
振れ取り前に全体のテンションをすこし上げておきます。スポークのネジを見えなくなるまで締めるのがよくある目安のようです。全体を少しずつしめていきます。
時間さえかければ振れ自体は収まると思います。注意したいのがテンションがバラバラでも振れが取れてしまうことです。ニップルがゆるゆるだったりきつきつだったりします。
そこで全体のテンションを整えます。10kgf差ぐらいに抑えたいところです。テンションをいじっているとまた振れが出ると思います。ですので振れ取り、テンション調整を繰り返します。
どのへんまで追い込むかは人によるのですが、横振れ縦振れ共に1mm以下なら十分ではないでしょうか。慣らしの後に再度調整は必要です。
やはり凄かった左右のテンション差
とりあえずヘッポコな腕なりに一通り振れは取れました。次はセンターを出しつつ、目標テンション値まで上げていきます。
まずテンションの目標値を決めなくてはなりません。とりあえず上限いっぱいにしようと思っていたのですが今回のリムAL22W、製品サイトに上限値が書いてありませぬ…。仕方ないので一般的に120kgfがリムの上限なことが多いらしいのでそれを目指そうと思いました。
ところがです。
反フリー側のテンションを下げても下げても全然センターが出ない。リムがフリー側に全く寄っていきません。
正確な数字を記録し忘れてしまったのですが、なんとかセンターを出せたとき、フリー側が120kgf程度で反フリー側は50切っていました。反フリー側は2分の1ぐらいと聞いていましたがそれよりだいぶ下です。
これが手組でよく聞く左右のスポークテンション差というやつです。最初聞いたときはよく分からなかったのですが、実際やってみるとなるほどと思いました。
さてどうしたものかととりあえず反フリー側を70kgfまで上げましたが、その時のフリー側は145kgfぐらいでした。(写真の角度が悪く目盛り54に見えますが53です。)これは流石によろしくない。テンションを上げすぎるとスポークやニップルの寿命は縮みますし、最悪リムの破損の繋がります。
この左右差をどうにかしようと皆様苦労されてるわけです。緩和方法として左右で組み方を変える、左右でスポークの素材を変える、オフセット(アシンメトリ)リムを使うなどがあります。
私のように11速を使う気がないなら、シンプルに8速や9速ハブ(FH-RS300等)を使う手があります。1mm程度ではありますがフリー側のフランジ幅に余裕が出来ます。ハブの質は多少下がるかもしれませんが一番簡単な方法だと思います。実際これにすれば良かったと反省中です。
とりあえず今あるものでなんとかしたいので、フリー側テンションを落としつつなんとか釣り合いを取らなければなりません。
ここでいくつか疑問やら問題が出てきました。
スポークテンションの下限値
スポークの上限値はリムごとに決まってるのでわかります。下限値のほうがいまいちわかりません。どこまで上げれば十分と言えるのでしょう。一応テンションメーターの説明書に適正テンションの範囲は書かれています。1.8mmスポークの場合は大体40~165kgfの間が適正値、だいぶ広い範囲です。
そもそもテンションが低いとどうなるのでしょう。調べるとニップルが緩みやすくなる、トルクを掛けたときのホイールの反応がにぶい、もがいた時など横に大きい負荷がかかるとリムがブレーキシューに接触するといった模様。
やはり低すぎるのもよろしくはないようです。スポーク本数や体重、好みでも適切な数字は変わってきそうです。やはりここも実際やってみるしか無いパターンです。(出来ることなら左右のテンション差の少ないシングルスピードで試したいところですが。)
PWTテンションメーターの目盛り
とりあえず145kgfまで上げたと書きました。バネ式のテンションメーターはテンションが高くなるほど、一目盛りのテンション値の変動が大きくなります。上の換算表だと目盛り41で40kgf、42で45kgf。その差は5kgf。それが目盛り52の130kgfと53の145kgfだと、差が15kgfまで大きくなります。
これ自体に大した問題はありません。ParktoolのTM-1も似たような数字です。ただこのPWTのは1目盛りがえらく狭いです。気になって測ってみたら1mmも無い。
この1mm未満の狭い間隔に15kgfが詰まってるわけです。測り方で目盛りも多少ずれるので、高いテンションだとあまり実用には適さないかもしれません。出来るだけ145kgfまで上げない使い方をしましょう。もしくはTM-1を買いましょう。そこまで高いものではありません。
数字の正確さに関しては他のテンションメーターを持っていないので確かめようがありません。確実な精度が必要ならDTSWISSかホーザンのテンションメーターを買うことになります。
スポークのねじれ
テンションを上げていくと段々とニップルが固くなってきます。適当な締め方をするとアルミニップルは簡単になめます。何回かやってしまいました。
Parktoolのスポークレンチの精度・使いやすさは良好です。145kgf付近になると両手でガッチリ保持しながら回していました。そんなことをやっていてふと思いました。これだけ力をかけてニップルを回していてスポークは捻れないのだろうかと。スポークは丸型、見た目ではわかりません。
そこで検索。「スポーク 捻れ」。
うん。やっぱり捩れるそうです…。
では捻れないためにどうするのか。スポークを保持するために、なにやらワイヤープライヤーを改造したオリジナル工具を使うとかなんとか。安くはないのでおいそれと手は出せません。というかマニアック過ぎてどこで売っているのかすら分かりません。
今回は使わなかったのですがエアロスポークですとスポークホルダーが各メーカーから出ています。扁平部分を支えるだけのシンプルな構造で安い。エアロスポークのが初心者向きと書かれてるブログすらありました。むぅ…。
とりあえずスポークをリム側に押し出す負荷をかけたり、よくある馴染みだしでヨシとしましょう。パキンパキン鳴ってるからねじれは取れています。取れてるはず。
(次はPillarで組も…)
一応完成
そんなこんなで色々悩みながら組んでみました。できるだけフリー側はテンションを下げて下げて、反フリー側は上げてあげて。
最終的にはフリー側135kgf、反フリー側60kgfでだいたい落ち着きました。センターも許容範囲でしょう多分。上限120kgfということを考えると135kgfでも多少不安が残りますが、とりあえずこれで様子見です。【追記】後に120kgfまで落としました。
スポークの長さもニップルを見る限り完璧ではないものの問題ないでしょう。
これで一応の完成となります。
次は重量など各パーツの細かいところでも書いていこうかと思います。